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高次脳機能障害の認定のツボ

高次脳機能障害の認定のツボ交通事故により高次脳機能障害が生じた場合、適切な賠償を受けるためには、まずは、被害者の症状が高次脳機能障害であることを認めさせる必要があります。
後遺障害として高次脳機能障害が認められるためには、主に、以下の3点がポイントとなります。

(1) 意識障害

脳外傷による高次脳機能障害は、意識消失を伴うような頭部外傷後に起こりやすいと言われています。そのため、事故当時の意識障害の程度とその持続時間を明らかにする必要があります。 意識障害の程度については、JCS(ジャパン・コーマ・スケール)や、GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)などという方法が用いられます。

目安としては、事故当初に、半昏睡以上の意識障害が6時間以上続くか、もしくは軽症の意識障害が1週間程度続くこと(高齢者の場合はこれより短くてもよい)、とされています。

したがって、事故直後の意識障害についても、主治医や看護師に確認をとり、カルテ等に記載を残しておいてもらうことが望ましいといえます(実際には、事故直後の重篤な状況の中でそのような対応が難しいことも事実です。)。

(2) 画像所見

画像所見とは、脳に損傷があることがCTやMRIの画像から確認できるかどうかということです。受傷直後の脳室内出血やくも膜下出血、又は、受傷数日後の脳委縮などが画像上認められることが必要となります。

せっかく撮ってもらったCTでも、脳の損傷がはっきりと分からない……そんな場合でもあきらめてはいけません。
びまん性脳損傷の場合などは、CTで分かりにくい病変がMRIで確認できることがあります。CT上は異常が分からなくても脳損傷が疑われる場合は、受傷後、できるだけ早期(2~3日以内)にMRIを撮ることが望ましいとされています(
「自賠責保険における高次脳機能障害認定システム検討委員会」報告書)。
また、CTやMRIでも脳の損傷がはっきりしない場合でも、PETやSPECTという検査を行い、脳の血流状態を見ることで、損傷が確認できる場合もあります。但し、「自賠責保険における高次脳機能障害認定システム検討委員会」報告書では、PETやSPECTのみでは、脳損傷の有無、認知・行動面の症状と脳損傷の因果関係あるいは障害程度を確定的に示すことはできないとしています。

裁判例の中には、CT、MRIの画像で脳外傷を示す所見がない場合であっても高次脳機能障害を認めたものもあります(大阪高裁平成21年3月26日判決等)。しかしながら、現在のところ、損害保険料算出機構(自賠責の等級認定を行う機関)の見解では、MRI、CT等の画像で脳外傷の存在が確認できないケースについては高次脳機能障害と認定することはできないとされています(軽傷頭部外傷後の高次脳機能障害についても現在のところ認定については慎重であるものと見受けられます。)。したがって、まずは画像所見を得ることが重要です。

 

(3) 事故後の症状

高次脳機能障害の症状は、日々の社会生活において生じる様々な不都合として現れます。骨折であればレントゲンに写りますが、高次脳機能障害の具体的な症状は、患者さんと接しないと分かりません。そこで、高次脳機能障害であると認めてもらうためには、担当医に「神経系統の障害に関する医学的所見」を作成してもらうことに加えて、家族や介護者が「日常生活状況報告書」を作成し、具体的な症状の状況について、説明する必要があります。

この点について注意していただきたいことがあります。
高次脳機能障害の患者さんのご家族の方とお話すると、「病院の先生の前では緊張するのか、普段よりも礼儀正しく振舞い、感情も抑えられています。そのため、病院の先生には、症状の重さが伝わっていないように思います。」ということをよく聞きます。

上記のとおり、担当医には「神経系統の障害に関する医学的所見」を作成していただく必要がありますが、担当医は、患者さんの普段の状況を知りませんし、医者の前では普段よりもしっかりする患者さんも多く、担当医が患者さんの状況を正確に把握しているとは限りません。普段から、患者さんの日頃の行動について、医師にも詳しく伝え、正しい障害の程度を認識してもらう必要があります。

また、家族や介護者も「日常生活状況報告書」を作成する必要がありますので、日々の生活の中で、患者さんの行動の不具合については早い段階からメモを残すなどしておくことをお勧めします。なお、「日常生活状況報告書」のスペースだけで症状を詳しく書ききることは不可能です。家族や介護者その他、患者さんと普段接している方が、別途報告書の形で、詳細な状況報告を書いてください。

普段接している人にしか分からない、患者さんの本当の状況を、具体的かつ詳細に報告しなければ、本当の症状に基づいて等級認定をしてもらうことができません。私が受任するケースでは、この場面ではしっかりと家族のお話を聞いて、できるだけ多くの方に、詳しい報告書を作成していただくことにしています。

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